2017年に松井憲作さんと二人展をした。
その時松井さんは70歳で、僕が64歳だった。
松井さんと僕は6つ歳の差がある。
展覧会の最終日に、「日下部君が70歳になったとき、また二人展をしよう」と松井さんに提案された。
ずいぶん先のことのように思えたので「生きていたらぜひやりましょう」と答えた。
ギャラリー開のオーナー・榎本さんも「その頃まだ画廊をやっていたらやりましょう」と冗談で返してくれたが、あれからもう6年経ってしまった。
先の時間は長いが、過去の時間は本当に短いと改めて思う。
さいわい今現在、僕も松井さんも健在で、ギャラリー開の榎本さんもあの時と変わらず営業されている。
この歳になって約束自体を忘れてしまうようなボケ状態でもなかったので、二回目の展覧会「日下部一司と松井憲作」が可能になった。
6年前の案内状デザインは僕の担当だったので、二人がそれぞれ使っている水準器をモチーフにした。
当時の松井さんは水平・垂直を意識した作品を作っていたし、僕は写真の重力について考えていた。
そんな理由で水準器が二個並んだ案内状を作ったのだった。
今回もハガキのデザインを任せていただいた。
前回と同じふたつの水準器を並べるだけのものだ。
文字の位置もレイアウトも紙質も前回と変わり映えしない。
わざとそうした。
最初のハガキを記憶している人がいるかどうか定かではないが、6年後にこの案内状を見たときのデジャヴュ感を想定している。
見ることや記憶することの曖昧さを知らないわけではない。
既視感はまれに生じるものだから、その程度の確率を期待しての印刷物となった
Comments