すでにそこにあった
会話の中で「レディメイド」という言葉を発音したら、なんだか懐かしさを覚えた。そう言えば最近、この言葉を使う機会が減った。概念が定着したというか古くなったというか、そんな気がする。
「既製品」という言葉は日本語で、こちらの方はまだ普通に使えるように思う。ただ、美術用語として使うことがないから、美術でいうレディメイドとはまた違うのだ。
ここで「すでにそこにあったもの」という言い方をしてみよう。それは、建物であったり調度品であったり、道具であったり、人間や動植物であったり、大自然であったり、芸術だったり、要するにこれまでの歴史だったりする。小さくいえば自分の古い作品などもそうかももしれない。
近ごろ「風景を愛でる』というタイトルで写真作品を制作しているが、これはすでにある風景をカメラで切り取るだけのことだ。しかし、実を言うと四角い孔の開いた手帳くらいの大きさの厚紙をもって、孔の向こうの風景をのぞくだけでもいいような気持ちにもなっている。風景に近づいたり離れたりしながら、身辺を切り取って遊んでいたらそれで十分楽しい。カメラは記録機能がついた厚紙のようなものだ。
すでに風景はそこにあり、それを自分の眼がいいように眺めるだけだ。 すでにそこにあった身の回りのものに最小限に関わり、都合の良いように自分の眼が眺める仕掛け、そういう展覧会をしたいと思った。レディメイドというには気恥ずかしく、既製品というほど よそよそしくはない、そういうものたちを役者に見立て、そこで始まる舞台を見たいと思う。(日下部一司)
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日下部一司個展
会期:2023年1月9日(月)-1月21日(土)
開催時間:11:00-19:00/土曜日17:00 日曜日休廊
開催場所:Oギャラリーeyes
大阪府大阪市北区西天満4-10-18石之ビル3F
TEL/FAX:06-6316-7703
主催:有限会社オーギャラリー(http://www2.osk.3web.ne.jp/~oeyes/)
企画:Oギャラリーeyes(O Gallery co.,ltd.)
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