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すべての角が直角の四辺形を「矩形(くけい)」という。

人が矩形を意識し始めたのはいつからだろう。

太古の昔には、四角い形で切り取り対象を見ることなんてなかったはずだ。

その必要もなかった。

住居が生まれ、建造物を作り始めることで直線が生じ、四本の線が矩形を意識させた。

それが始まりかもしれない。

 

テレビやパソコンのモニター・新聞・ノート・窓・絵画・・・そういう四角い形を抵抗なく受け入れながら僕たちは情報を共有する。

写真も矩形の中でなり立つ世界だ。

しかし、我々の見る世界が四角いわけではない。

眼を大きく回して自分の視野を確認したら、世界は円形に近い。

「イメージサークル」というように、レンズの映し出す映像も実は円い形をしているのだ。

最近、僕は焦点距離の極度に短いレンズをつけて円形の写真を撮っている。

丸い形の写真は、四角い写真とはまたちがう造形原理があるように思う。

 

「現像」あるいは「印画」という言葉は、像が眼に見えるようにするための細工のことだ。

写真はなんらかの支持体の上に画像を定着(あるいは投影)することではじめて見ることができるわけで、ダゲレオタイプは銅板の上に、ゼラチンシルバープリントは紙の上に、リバーサルフィルムで撮った写真はプロジェクターで壁面に、というように必ず支持体を必要とする。

そしてパソコンやスマホの液晶は、支持体でありながら同時に写真の「現像装置」の役割を果たしている。

 

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