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おもかげおこしふくわらひ


おもかげおこしふくわらひ

井上明彦+今村源+日下部一司+三嶽伊紗

アートメッセンジャーin徳島

10月31日(水)-11月4日(日)

徳島県立美術館ギャラリー

〒770-8070徳島市八万町向寺山 文化の森総合公園内 TEL: 088-668-1088 FAX: 088-668-7198

今年の夏、障がい者支援施設シーズ・徳島県立障害者プラザ・障害者支援施設 箸蔵山荘でのワークショップを行いました。

この展覧会は、障がい者支援施設シーズを中心とする施設利用者の皆さんとの制作物を展示するものです。

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なおこの展覧会終了後、2019年1月にart space co-jin(京都)で、会場にあわせ制作物の再構成を行い展示します。

おもかげおこしふくわらひ

2019年1月10日(木)〜27日(日)

art space co-jin

〒602-0853 京都市上京区河原町通荒神口上ル宮垣町83

レ・フレール 1階

tel & fax 050-1110-7655 10:00-18:00 月曜定休

徳島新聞 2018年11月27日

↑ 徳島新聞2018年11月27日

美術発見 2018年11月

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今週、冬がいよいよ立ちました。厳しい冬はときに、戸内に引き籠もって、暖かで生きている火を囲みながら親しい人たちとじっくり時を過ごす時間を与えてくれます。光なくして私たちはものを見ることができませんが、この光の種類や質によって、その下で過ごす時間の豊かさも随分と違ったものになります。多様な光を日常的に持つに至った昨今、私たちは良い選択ができているのか、時に疑問がいっぱいな場面にも多く出会います。

さて、今年も県内の知的障害者と現代美術家が協働して取り組んだ事業「パラレル/クロッシング エキシビション」が文化の森総合公園内の近代美術館ギャラリーで開催されました。(2018.10.31〜11.4)今年で三年目を迎えたこの事業の、今年度のタイトルは「おもかげおこし ふくわらひ」でした。昨年度も携わった美術家の今村源さん(京都府在住)、日下部一司さん(奈良県在住)、三嶽伊紗さん(滋賀県在住)に、井上明彦さん(京都府在住)が加わりました。

展覧された作品は二つの部分から成り立つものでした。それはタイトルにも表されていますが、ギャラリーの壁面いっぱいに700枚あまりの「福笑い」が掲げられ、床には板段ボールに描かれたたくさんの人影がうごめき、段ボールから飛び出そうとでもするかのように、切り出され、起ち上がろうとしていました。

この人影は、この活動に関わった全ての人たちのもので、200枚ほどあります。一人一人がダンボ-ルの上に横たわり、それを取り囲んで、たくさんの手が、たくさんの色のワックスペンシルで、横たわる一人の影を描き出しました。

その際に作家たちは「描き出す人が光になって、横になっている人の影を写そう」と声をかけました。たくさんの手が関わるほど、人の姿が豊かで多様な表情を見せますし、多くの色で輪郭が美しく彩られます。描き出す、描き手の一人一人が光なのだという美術家たちのメッセージが、なんと美しく感じられたことでしょう。加えて、人は他によって描き出され、理解されるとでもいうような作業過程は、実に深い概念をたたえていました。

他方、壁面を埋め尽くす福笑いは、あらかじめ卵形の顔の輪郭をぼやかして印刷した台紙に、多種多様なパーツを貼り付けたり、クレパスやマジック、色鉛筆など、たくさんの描画材によって描き込んだりして完成させた、これまた一つとして同じものは一つとしてないものでした。

五百羅漢像を観るときのように、一つ一つを丁寧に眺めてゆく中で、自分に似た顔を見つけることができた人がいたかもしれませんし、パーツを貼り付けて顔を作る作業から、思わず、美術史上では「キュビスム(立体主義)」や「未来派」などと括られる絵画のスタイルを彷彿とさせる一枚に出会うことがあったかもしれません。

(一)

私たちは、自分の手に光を集めて

となりにいる仲間の影を描いた

手から発せられる光に彩られて

その人のおもかげがふわりと浮かびあがる

光は、もののすがたをあらわにして、影を生む

一人にひとつずつの影には

一人一人のおもかげがにじんでいる

そのおもかげを生き生きと起ち上げよう

(二)

ふくわらひは、たのしいあそび

ほんの少しの歪みが、可笑しさを生む

私たちは思い思いに、台紙に目鼻をつける

ふくふく笑ふ、ふくわらひ

たまごには一つとして同じ形のものがない

一人一人の顔も同じものは一つもない

私たちが作った顔も全部ちがっている

ふくふく笑ふ、ふくわらひ

今年も美術家たちのきっぱりとしたコンセプトや細やかな気遣いがあふれる材料の準備の上に、障害を持つ人たちの楽しい時間を留めた作業の集積が満ちあふれるインスタレーションになっており、現代美術の敷居を低くし、理解を深めるための「アート・メッセンジャー」としての障害を持つ人たちの仕事は意義深く、印象的でした。

(玉川稲葉)


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