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おもかげおこしふくわらひ


昨年10月・11月に徳島県立近代美術館ギャラリーで「おもかげおこしふくわらひ」という展覧会をしました。

知的障がい者施設でのワークショップとそこで生まれた制作物を用いた、井上明彦・今村源・三嶽伊紗・日下部一司・アートメッセンジャーin徳島 による展示構成でした。

このたびアートスペースco-jin(京都)で、同じ制作物を使った展示を行います。

徳島の展覧会に比べたら随分小規模になりますが、新たな試みも加えての「新作展」ともいえます。

お近くのお越しの節は是非ご高覧くださいませ。

詳細は→http://co-jin.jp

おもかげおこし ふくわらひ

2019.1.10thu-1.27sun

2019年1月10日(木)–1月27日(日)

月曜定休

10:00-18:00

美術発見 2019年1月

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新しい一年の始まりであり、平成の締めくくりでもある亥の年を迎えました。皆様には、今年もお健やかで幸多い日々を過ごされますようにと念じています。

さて、昨秋、文化の森にある近代美術館ギャラリーで展覧されていた「おもかげおこし ふくわらひ」展が、初春の京都に巡回し、趣向も新たに開幕しています。(1月10日〜1月27日 art space co-jin、京都市)

先にもご紹介したように、井上明彦、今村源、日下部一司、三嶽伊紗という関西をベースに活躍する4人の実力のあるベテラン作家たちと徳島の知的障害者たちとの協働展で、活動についてもより多くの人たちに知って頂きたいという思いから、県外への展覧会の巡回となったようです。京都府が障害者の作品を展覧するために設けたスペースですので、このような美術家と障害者とで創り上げた作品の展覧という珍しい試みの紹介は初めてのことと思われます。

障害者施設の利用者や職員たちとともにワークショップを経て、板段ボールに横たわった人を取り囲み、参加者が光となって映じた影を描き留めた作品群の一部が床に、台紙に顔のパーツをくっつけたり、様々な描画道具で描いたりして遊んだ700余枚の福笑いの作品が壁に、床にと設置されただけでなく、今回の京都会場では、徳島での展覧会との繋がりを目に見えるかたちで表したビデオ作品が設置されています。

床下にあった大きなスペースをなんとか活用することができないだろうか、とワクワクしながら考えた作家たちが導き出した一つの提案は、地下空間にモニターを設置し、そのなかに徳島会場の設営時に天井から記録した作業の様子をコマ割り編集した動画をループで流すということでした。刻々と仕上がってゆく会場が、床下の小人たちの世界のように見えて、実際のインスタレーション作品についても、この小人たちの作業場で生み出されたもののように感じられました。

床下にうごめくものが潜んでいることによって、会場はなんとなく、これまで以上に生き生きとした表情を見せているようでもあり、真夜中の会場では福笑いたちが一斉に歌など歌いだし、それにつられて、面影法師たちが段ボールから抜け出して自由になり、床の上を好き放題に踊っていたりするのではないかと思われるほどでした。

床板の一部を取り換えて、モニターを覗く穴を穿ったものと取り替えてあり、穴にはガラスレンズが填め込まれてあります。設営の初日に、徳島から参加した利用者+職員チームに向かって、作家たちは「この床の下は、徳島に繋がっています」と説明したのですが、まさにその通りとなるような見事な結実でした。

広角レンズで撮影した画像を丸い地球を眺めるように編集し、徳島会場の高く広い壁面が大量の福笑いによって埋め尽くされてゆく様子や、会場でのワークショップを経て、一枚一枚の段ボールに刻まれた「面影法師」たちが会場のあちこちに整えられてゆくさまを見るのは、天上から下界の出来事を眺めているお釈迦様の気分をも味わえるのではないかと思われるほどです。この床下を通って、すべてのパーツが運び込まれたと考えることもできるでしょう。

さて、会場床に空いた直径10cmほどのホール(穴)は、徳島としっかり繋がり、この会場に設置された作品の来し方を知らしめるだけでなく、ドラえもんの持ち物の一つのようでもありました。もうすぐ元号も改まり、未来からやってきてドラえもんが発見された昭和もますます遠いものとなるでしょうが、ドラえもんの本来生きるべき時代には近づくということでもありましょう。

美術家たちの仕事はいつも、時代の空気を敏感に察知して、表現を先取りすると話されることがありますが、今回もちょっとそう言われることの片鱗を感じました。「三人寄れば文殊の知恵」と言われますが、美術家が4人も集まれば、ドラえもんの秘密道具の一つくらいは実現するものなのだなあ、と・・・。よい展覧会に出会える一年となりますように。

(玉川稲葉)


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